共有持分は、他の共有者の同意がなくても自分の意思だけで放棄できます。放棄した持分は、他の共有者に持分の割合で移ります。ただし、登記を変えるには他の共有者の協力が必要で、受け取った側に贈与税がかかることもあります。この記事では、放棄の仕組み、手続きの流れ、売却と比べたときの向き不向きを解説します。
持分の放棄とは
民法第255条では、共有者の1人が持分を放棄したとき、その持分は他の共有者に帰属すると定めています。
兄・妹・自分の3人で3分の1ずつ共有している家で、自分が放棄した場合はこうなります。
| 共有者 | 放棄前 | 放棄後 |
|---|---|---|
| 自分 | 1/3 | なし |
| 兄 | 1/3 | 1/2 |
| 妹 | 1/3 | 1/2 |
放棄した持分は、残りの共有者の持分の割合に応じて分けられます。お金は受け取れません。
放棄が向いているケース
放棄は、持分にほとんど価値がなく、持っているだけで負担になる場合に向いています。
- 地方の空き家や山林などで、買い手が見つからない
- 固定資産税や管理費が毎年かかり、使う予定もない
- 他の共有者と関わりたくないが、売却の手間もかけたくない
一方、持分に価値がある場合は、放棄するとその価値をすべて手放すことになります。買取業者に売れば、持分の価値の3〜5割程度を受け取れることがあります。放棄を決める前に、一度査定を取って比べてください。
放棄の手続きの流れ
1. 放棄の意思を伝える
他の共有者に、持分を放棄することを伝えます。後で争いにならないよう、内容証明郵便で送るのが一般的です。
2. 登記を変える(持分移転登記)
放棄しただけでは、登記簿の名義は変わりません。名義が残っていると、翌年以降も固定資産税の通知が届きます。
この登記は、放棄した人と、持分を受け取る他の共有者が一緒に申請します(共同申請)。他の共有者が協力しないと、登記を変えられません。
3. 協力してもらえない場合
他の共有者が登記に応じない場合は、「登記引取請求訴訟」を起こして、判決をもとに単独で登記する方法があります。時間と費用がかかるため、弁護士への相談が前提です。
放棄の3つの注意点
1. 受け取る側に贈与税がかかることがある
放棄で持分を受け取った共有者は、税金の上では贈与を受けたのと同じ扱いになります。受け取った持分の評価額が年110万円の基礎控除を超えると、相手に贈与税がかかる可能性があります。相手にとっては「勝手に押し付けられた上に税金まで取られる」形になり、揉める原因になります。
2. 押し付け目的だと認められないことがある
管理の負担を他の共有者に押し付けることだけが目的の放棄は、権利の濫用として認められない可能性がある、と法制審議会の資料で指摘されています。特に、相手が明らかに困る状況での放棄は慎重に考えてください。
3. 早い者勝ちになることがある
共有者全員が放棄を考えている場合、先に放棄した人の持分が残りの人に移ります。最後に残った人がすべてを引き受けることになるため、他の共有者が先に動くと、自分は放棄できなくなります。
放棄と売却の比較
| 項目 | 持分を放棄 | 持分を買取業者に売る |
|---|---|---|
| 他の共有者の同意 | 不要 | 不要 |
| お金 | 受け取れない | 受け取れる |
| 登記 | 他の共有者の協力が必要 | 業者が手続きする |
| 他の共有者の負担 | 贈与税がかかることがある | 業者との交渉が始まる |
| 向いている物件 | 価値がほぼない物件 | 一定の価値がある物件 |
登記の協力が得られない場合や、少しでもお金に換えたい場合は、買取業者への売却の方が早く確実に抜けられます。業者の選び方は共有持分の買取業者の選び方を参考にしてください。
まとめ
- 共有持分は、他の共有者の同意なしに放棄できる
- 放棄した持分は、他の共有者に持分の割合で移る
- 名義を変えるには、他の共有者と一緒に登記を申請する必要がある
- 受け取る側に贈与税がかかることがあり、揉める原因になる
- 持分に価値があるなら、放棄の前に買取の査定を取って比べる
放棄の可否や税金は、個別の事情で変わります。実際に進める前に、弁護士や司法書士、税理士に相談してください。